電力取引へのインターネットの適用

摘要

インターネットの発達は絶え間なく加速し，"ネット"を利用した各種サービスは，我々の社会活動のあらゆる領域にまで浸透してきた。 これは，企業のビジネス活動を変貌させ，既に，インターネットを抜きにしては企業活動そのものが成り立たない状況となっている。 また，インターネットの発展は企業内外や国内外の境界をも取り去らおうとしており，世界の経済活動のボーダレス化が進んできた。 このようなすさまじいビジネス環境の変化の中で，これまで資本集約型産業の代表格であった電気事業の領域においても，電力自由化が本格化し，インターネットの発展を伴って大きな改革が起きている。 電力自由化つまり電気事業の市場化は，欧米諸国で始まり，1990年のイギリスにおけるプール取引におけるスポット現物取引の開始，1995年のノルウェーにおける先物取引の開始，さらには，1998年の米国カリフォルニアにおけるリアルタイム取引の開始など，時代とともに取引対象となる電力の商品化が拡大してきた。 しかし，いまだなお，商品や為替，金利などの取引と比較すると，電力取引は発展の緒についたばかりと言わざるをえない。 今後どのように電力市場が形成され，電力取引に対してインターネットがどのような役割を果たすことができるかは未知数な部分も多いが，それが電力市場において重要な役割を果たすことは疑う余地もない。本稿では，電力取引の意義とそれを実現するための仕組みについて述べ，電力取引所や系統運用機構，さらには各市場参加者に必要となる機能要件について説明する。 また，これらを実現するためのインターネットプラットフォーム技術について，その現状と今後の発展について述べる。