海洋性油脂を中心とした機能性素材の抽出法

摘要

脂質はタンパク質や炭水化物と共に3大栄養素の一つに数えられており，我々が生きていく上で必要不可欠な成分である．生体脂質の主要成分としては，トリアシルグリセロール（TG；中性脂肪），リン脂質，コレステロールなどが挙げられ，それぞれ生体を構成する重要な要素である．TGは主としてエネルギーの貯蔵物質の役目を担い，TG中の脂肪酸の酸化により効率的にATPが産生される．また，皮下に蓄積した中性脂肪は，外界の衝撃から人体を防御する機能も有する．一方，リン脂質やコレステロールは細胞膜の主要成分であり，特にリン脂質は膜の構造を維持するのに不可欠な構成要素である．リン脂質には，分子内に不飽和結合を複数有する高度不飽和脂肪酸（PUFA）が含まれており，これらの脂肪酸は単にエネルギー源として重要なだけでなく，様々な生体機能も有する例えば，リノール酸（18：2n－6），アラキドン酸（20：4n－6），ドコサヘキサエン酸（DHA；22：6n－3）などのPUFAは，生体を正常に維持する上で必須な成分であり，我々はこれらの必須脂肪酸を食品から日常摂取している．