視覚に障害のある生徒の，森の観察--那須甲子少年自然の家における盲学校高等部の夏季学校の体験を中心に--

摘要

筑波大学附属盲学校において，高等部1年生の夏季学校で自然観察会を取り上げたのは30年近くも前のことになる。 当時，筆者は同校の理科の教員であった。 奥蓼科で行われた自然観察会ではコメツガとオオシラピソの林を観察フィールドにした。 植物の専門家がボランティアで指導をしてくださったが，視矧こ頼らずにコメツガとオオシラピソを区別する説明に苦慮していた。 すると，生徒の一人が，「手でしごいて痛いのがコメツガで，痛くないのがオオシラピソだ」と意見を述べた。 試してみるとそのとおりで，コメツガがチクテクするのは，葉枕が手に触れるためだった。 このように，触覚は視覚障害者の自然観察において大切な感覚である。