静岡県のチヤ園に生息するチヤノコカクモンハマキの薬剤感受性と ジアシルヒドラジン系IGR剤に対する薬剤抵抗性

摘要

チャの重要害虫であるチャノコカクモンハマキの静岡県 牧之原地域の個体群を供試し，15薬剤に対する感受性検定 を実施した.島田市湯曰個体群において，ジアシルヒドラ ジン（DAH)系IGR剤のテブフェノジド，クロマフェノジ ドおよびメトキシフェノジドの3剤は，処理10日後の補 正死虫率が，2004年と比較して，2005年ではいずれも低 かった.一方，ベンゾイル尿素（BU)系のルフェヌロンお よびフルフヱノクスロンにおける同死虫率は，両年で明ら かな違いは認められなかった.供試個体群に対し，IGR剤 以外の薬剤で高い殺虫効果を示したのは，クロルピリホ ス，プロフェノホス，クロルフエナビル，メソミル，スピ ノサド，エマメクチン安息香酸塩およびビフェントリンの 7剤であった.さらに，DAH系およびBU系IGR剤につい ては，5年間にわたって湯日個体群の薬剤感受性を継続調 查した.DAH系IGR剤のテブフェノジドのLC_(50)値は， 2004年調査開始以後，年次が経過するに従って，急激に 上昇し，2008年には常用濃度200ppmを大きく上回った. DAH系のクロマフヱノジドのLC_(50)値は，2004年から2005 年にかけて急激に上昇し，常用濃度50-lOOppmを大き く上回った.DAH系のメトキシフェノジドのLC_(50)値は， 2004年以後，上昇傾向となったものの，2008年時点では 常用濃度25-50ppmを下回った.BU系IGR剤のルフヱ ヌロンおよびフルフェノクスロンのLC_(50)値は，DAH系3 剤と比較すると，上昇の程度は小さかった.湯日個体群に おいて，DAH系のテブフェノジド，クロマフェノジドお よびメトキシフェノジド，BU系のルフェヌロンの4剤は， いずれも年を経る毎に，抵抗性比は指数関数的な上昇傾向 を示した.ここで，抵抗性比を対数変換した値を用いると，経過年数と,抗性比は，有意な正の相関レ<0.05)を 示し，回帰直線に良く適合した.回帰直線の傾きは，テブ フェノジド，メトキシフヱノジド，ルフェヌロンでそれぞ れ0.36，0.17, 0.14となり，テブフェノジドが他剤よりも 傾きの大きい傾向が認められた.なお，回帰直線の傾きに 基づくと，テブフェノジドでは1年経過するごとに約2.3 倍，メトキシフェノジドでは1.5倍，ルフェヌロンでは1.4 倍に抵抗性が発達していた.