高浸透圧凍結希釈液を用いたバークシヤーおよび ァグ一精子の凍結保存におけるglycerol濃度の影響

摘要

ブタ凍結精液は，凍結時のダメ一ジにより融解 後の精子機能性が損なわれ，人工授精後の繁殖成 績が低レ、ことから生産現場ではほとんど使用され ていない。これまでに，凍結過程の急激な温度変 化は精子の頭部，中片部および尾部それぞれを損 傷させる結果，受精能に悪影響を与えることが知られている（Curry. 2000)。精子は膜の単純拡散 あるいは，細胞膜に発現するタンパク質である Aquaporinesにより細胞内外の水分子の透過が行 われているが（Calliesら，2008),この細胞内自 由水が急速凍結により氷晶を形成するため，氷晶 が細胞質.細胞小器官.細胞膜に対して物理的ダ メージを与え，その結果，精子の運動性の低下が 起こると考えられている（Watson, 2000 ； Johnsonら，2000 ； Nishizonoら，2004)。精子凍結希釈液 で一般的に使用されるglycerolは細胞内氷品形 成を抑制することで凍結を可能とするが（Lovelock and Polge, 1954),一方で，細胞毒性も合わ せ持ち.精子の代謝活性を阻害するなど，精子の 生存性に対して負に作用することも報告されてい る(Jeyendranら，1985 ； Hammerstedtら，1990)。