海洋生態系及び水産業への東日本大震災の 影響と復興支援の取組

摘要

2011年3月11日，東北地方太平洋沖大地震により 発生した津波が，漁港施設，漁船，定置網や養殖施設等 に大きな被害を与えた。地震や津波による被害の報道に 接するにつれ，海洋学や水産学に携わる多くの研究者 は，津波により海藻類や魚貝類，干潟域やアマモ場が消 失するとともに，さらに沿岸から沖合までの広い海域に 大量の瓦礫，栄養塩類や化学物質がもたらされたのでは ないか，地盤沈下や海底地形等の変化に伴い，魚介類の 分布が大きく変化するのではないか等々，海洋環境の悪 化や水生生物への被害を危惧したに違いない。私自身 も，当時は遠く長崎の地にいながら，東北区水産研究所 や水産試験場等の職員の方々，お世話になった諸先輩や 漁業関係者の安否が気になるとともに，東北地方の漁業 や養殖業が長期にわたって操業できなくなるのではない かと不安に思ったものである。