砂質土壌下における連続および間断潅漑に伴う塩と水の動態ー塩分動態モニタリングシステムの適用ー

摘要

植物生育期間中の土壌中の塩分と水の動態を定量的に把握するために，塩分動態モニタリングシステムを用いて，濯漑法の差異が作物生育に及ぼす影響を検討した。 潅漑区を二つ設定し，いずれの濯漑区も，それぞれの蒸発散量を毎日与え，リーチング要水量については，潅漑区によって異なった潅漑法を行なった。 一つは毎日リーチング必要水量（0．3）を加算して濯漑する毎日区，もう一つは8日間に1回，8日間分のリーチング必要水屋（0．3）の合計を加算して潅漑する間断区である。 濯漑水には液肥を混入した塩化ナトリウム水溶液1500mg L~(-21) （ECw＝2．9dSm~(-1)）を用いた。 間断日数，リーチング必要水量および潅漑水の濁度を一定とした栽培実験ではあったが，潅漑法によって除塩効果および植物の肥料利用効率が異なっていた。 すなわち，毎日区と比較して，間断区において表層から下層への除塩効果が高かった。また，間断区では窒素の溶脱が比較的抑えられ，植物の肥料利用効率が高かった。これらのことは，植物の塩に対する感受性と植物の有効根群域の電気伝導度を考慮に入れ，リーチング潅漑の時期を把握することによって，水資源を有効利用しつつ，植物の生育を改善できることを示唆していた。本研究において，塩分動態モニタリングシステムを用いて，植物生育期間中における土壌中の塩分と水の動態を把握できたことは大きな成果であった。 今後は，異なる間断日数，リーチング必要水量および潅漑水の水質に対する除塩効果および植物生育の差異を，より定量化する必要がある。 なお本研究は，乾燥地研究センター共同利用研究の支援を得た。 ここに記して感謝の意を表する。