スギ花粉症対策のための森林科学の方向性

摘要

スギ花粉症は，1964年日光市の住民に初めて報告され た（堀口 .斎藤，1964)。その後，花粉症の発症率は全国 的に増加し，現在では国民の25%を上回っている（馬場' 中江，2008)。しかも，発症年齢の低年齢化も進んでいる。 これまでに，花粉症の原因として同定されている植物は， ブタクサ，ョモギ，カナムダラ，ォオアヮガエリ（チモシ一） を始め50種類を超えるが，日本で最大の原因を引き起こ しているのがスギゃヒノキである（篠原. 二村，2005)。 スギ花粉症に関わる国民の経済的負担は，1998年で2，860 億円と推定されている（川口ら，1998)。スギ花粉症患者 の急増の原因の一つとして，戦後人工造林されたスギゃヒ ノキ林の多くが着花樹齢に達し，花粉飛散量が急激に増加 したことがあげられる。また，ディーゼル排気微粒子の閧 与も指摘されている（村中.山本，2002)。森林科学分野 におけるスギ花粉症対策は花粉発生源を減少させることで あり，薬剤による雄花生産の抑制技術，森林管理による雄 花生産の抑制技術，雄性不稔個体や花粉の少ない精英樹の 植栽，広葉樹への樹種転換等が有効と考えられている（篠 原ら，2006)。しかし，広大なスギ林やヒノキ林に対して 花粉発生源対策を進めることは非常に困難であり，効率的 な対策が必要となる。