ウシ雄性発生胚の作出と体外発生

摘要

哺乳動物胚の発生過程における両親ゲノムの相補的な役割は、雌雄特異的なインプリント遺伝子の不均等な発現によって説明されておりり、近年、マウスのみならず家畜も胚発生におけるインプリンティング機構が報告されている。その中で、単一性由来胚－雄性発生胚および雌性単為発生胚－は、インプリント遺伝子の探索やその個体発生への役割を研究するための優れたモデルとして位置づけられている。 特に、雌性単為発生胚は、化学物質により容易にその発生を誘起することが可能なため様々の動物種で報告されている。一方、これまでに家畜における雄性発生胚の作は3報のみの報告で非常に少ない（ヒツジ、ウシ）。雄性発生胚は卵子核を含まない卵細胞質と精子由来の核により構成され、マウスにおいては主に2種類の作出方法、すなわち雌雄前核を置換する前核置換法、あるいは除核卵子への体外受精法が報告されている。しかし、ウシでは卵細胞質に含まれる脂質によって卵内部の観察が困難で、形態による雌雄前核の判別も難しいため前核置換法による雄性発生胚の作出は容易ではない。