「農業経済学の分析力： 農業経済学は市場をどう捉えてきたか」解題

摘要

近年の大会シンポジゥムにおける共通論題は.わが 国食料、農業、農村をめぐる政策、制度論や農業、食 科問題のグローバル化などの時事問題が中心であつた.1986-2010年度までの25回の大会のうち.時事問題 といえる共通論題は17回を数えている.これに対し て.2000-2001,2011-2012年度の4大会は.わが 国食料、農業、農村問題を考察する際の基礎的条件の 普遍性とその変容について焦点をあてた中長期テーマ を扱っている.いうまでもなく農業経済学は経済理論を基礎とした 応用経済学領域であり.農家、関係機関調査をはじめ とする実態調査や.政府統計等を利用した計量分析に よる豊富な実証分析を特徴としていた.もちろん，時 事問題を取り上げる上でも.その豊富な実証分析の蓄 積を背景としていたことはいうまでもない.わが国の 農業構造問題を検討する基礎をなしてきた農地流動化 に関する実証分析と議論，牛肉ォレンジ自由化論争. コメ関税化に関わる議論も学派を超えた豊富な実証分 析を基礎としてきた.これらの問題は，時事問題とし ても火の出るような議論が行われてきたが.その基礎 に農業経済学の実証分析が存在していた.