水田「手除草」の歴史から何を学ぶべきか

摘要

初夏。 活着したイネに鮮やかな緑がよみがえる頃になると，筆者の脳裏に必ずやよぎるものがある。 土屋又三郎がおよそ300年前に上梓した『耕稼春秋』（1707）の巻二稲之類の一節（土屋ら，1980）である。 「……六月炎天の時，又ハ其節雨降晴（雨上り）に草いきりにてむす幸甚し，終日あたゝか水にて足の指大きにかめるる（むくむ）物也，又物まけする物（かぶれやすい者）ハ面も脹れ，汗のしたたる事喩るに物なし，雨の降暗にぶとゝ云虫（ブユという虫）出て，恩人の手足をさす幸甚し，上たる人の能忍ぼるへき事にあらすといへとも，農人ハ宿馬に斉しけれハ能忍ふ……」〔（）内は筆者〕。