生物の光応答反応を利用した 害虫防除技術の開発

摘要

近年、光に対する生物の応答反応を利用した農業技術開発が盛んに行われている（Antignus, 2000; Ben-Yakir et al"2013;後藤、2010;本多ら、 2014; Johansen et al" 2011;田澤、2009)。その1 つが、害虫や天敵昆虫の光応答反応を利用した害 虫防除技術である。光を使った防除法の歴史は古 く、江戸時代には稲作においてたいまつを使って 害虫を追い払う「虫追い」が行われていた。明治 以降は、電気の普及に伴い、白熱電球を用いた誘 殺が行われ、さらに蛍光灯が開発されて防蛾灯が 普及した。第二次世界大戦後、害虫防除の革命と もいえる変化があった。それは化学合成殺虫剤の 開発である。1960年代には、有機塩素系や有機 リン系殺虫剤の残留農薬による環境破壊が社会問 題になったが、以降、環境負荷の少ない殺虫剤の 開発が進み、今日に至るまで化学合成殺虫剤が害 虫防除の主役になっている。光を使った害虫防除 技術としては、1990年代に、発光性能の高い黄 色ナトリゥムランプが開発され、お茶や野菜栽培 に導入されている。