IRRIで開発された水稲の鉄過剰耐性系統とその発現機構

摘要

熱帯地域における水稲の鉄過剰症は，塩害，亜鉛欠乏，リン欠乏症とならんで，土壌に起因する非生物的なストレスとして問題になっている。 水田では湛水条件下で七壊に酸素の供給が断たれ，畑状態では変化しない不溶性の三価鉄が，可溶性の二価鉄に変化することが知られているが，鉄過剰症は，これを水稲が過剰に吸収してしまうことから生じる水田にのみ起こる障害である。この障害は土壌中に還元されやすい鉄が多く，しかも土壌pHが低い場合に著しくなること報告されている。多くの場合，鉄過剰だけではなくカリウムやリンの欠乏を伴っており，実際，これらの栄養成分の施用により，鉄過剰症が改善される場合もある。