広範囲に広がる遺伝子組換え動物のいまとこれから——動物における遺伝子組換えの量的,質的転換について

摘要

この数年間で、「ゲノム編集」技術の急速な進展による遺伝子組換え技術の革新があり、さらに、「次世代シーケンシング」技術の進展により、従来に比べて、桁ちがいのゲノム情報が安価で得られるようになつた。これらの技術はあらゆる生物種に適用可能であり、遺伝子組換え生物の利用可能性は大きく広がり、量的にも質的にも大きな転換の時期を迎えている。これまでに「遺伝子組換え動物」(昆虫を含む)では、数種のバイオ医薬品の生産が実用化され、動物で国内初となる遺伝子組換えカイコの第一種使用等による試験飼育が開始されるなど、実用化が進みつつある。また、蚊などの害虫や外来種を駆除するためのジーンドライブという新しい技術の開発や、ヒトの病気のモデル動物や臓器の異種移植技術の開発、動物の成長を早くしたり筋肉量を多くしたりする技術などの開発など、バィォ経済の拡大を可能にする技術開発が急速に進んでいる。本稿では、遺伝子組換え動物の技術開発および実用化の現状と今後について、研究開発者の立場から情報を提供したい。