アフリカにおける低利用植物資源と生物多様性を利用した研究と開発〔1〕

摘要

今年，2010年は国連が定める国際生物多様t生年で ある.地球上の多様な生物とその生息環境の保全の 啓発を目的とするイベントが世界各地で開かれる 予定である.日本では野生の動植物を中心とする生 きものの「いのち」と「暮らし」，里山環境の保全, 天敵を利用した環境保全型農業が大きな焦点と なっている.他方，我々人間の生活や健康に密接に 関わる農業生物多様性（Agrobiodiversity)，すなわ ち，作物，家畜をはじめ，ポリネーターや土壌微生 物，害虫などを含む生物多様性（Jarvisら2006)に 焦点を当て，食糧危機，栄養失調，成人病，食文化 などとの関わりを明確にして，生物多様性の重要性 を紹介する取り組みは十分ではない.国連食糧農業機関（FAO)は，地球上の500—5000 万の全生物種のうち農業生物多様性に関わるもの はおよそ3万種であるとし，2004年の"World Food Day"において，生物多様性を維持することが人類の 食を守ることになると主張している.その一方で， 人類ば500種といわれる栽培作物中のほんの30種 程度に95%もの栄養を依存し，たった4種類の主要 作物（コムギ，トウモロコシ，イネ，ジャガイモ） からカロリーの半分を得ていると警告している.