農業経営の財務ハフォーマンス: 農業会計の到達点とこれかもの課題

摘要

「会計ビックバン」を経て企業会計は大きく変化している．例えば，一部ではあるが時価会計が導入されていること，貸借対照表に純資産の部を表示することなどがある．この「会計ビックバン」は，日本の会計基準を国際水準まで向上させるために新たに会計基準を設定して行われている．農業会計は，会計基準から逸脱できない関係にあるので，少なからず「会計ビックバン」の影響を受ける．また，日本の農業を取り巻く環境は，WTO体制下で安価な輸入農産物が増加したことによって厳しい状況にあり，正確に経営状態を把握し，経営計画と統制を行うことが求められている．すなわち，的確な経営管理を行うことが農業経営において契緊の課題となっている．このことは，利害関係者に対して的確な情報開示が必要であることを意味している．さらに，この小特集の佐々木市夫氏の論文にあるように，農業経営において社会的責任（以下CSRという）を考慮しなければならないことやCSR活動を推進する農業経営に資金を提供する者があらわれており，農業会計の利害関係者の範囲について検討する必要がある．