女性農業者の六次産業への取リ組みに関する一考察ーネッ卜ワークの機能を視点として一

摘要

本稿の課題は，女性農業者がグループや組織とし てではなく個別に取り組んでいる農産物の加工ゃ販 売といった多角的な事業（=六次産業化）の成長 における「人的なネットワーク」の機能を明らかに することである.すなわち，女性農業者が起業した 事業の成長を図る上で，ネットワークの形成，ある いはネットワークへの参加をとおして事業の成長に 必要となる有形·無形の経営資源をどのように調達 したかを明らかにする.このような課題設定は，二つの現状認識に基づく. 一つは，女性農業者が新たな事業の起業や運営に 取り組む上で必要となる経営資源を市場で調達する ことが困難な場合，ネットワークを活用することが 有効と考えられることである.もう一つは，六次産 業化に女性農業者は，近年ではグループや組織とし てよりも個別での取り組みの増加率が高いことであ る.なお，女性農業者が六次産業化に取り組む背 景として，同種の取り組みが女性農業者自身の成長を促進するとともに，地域社会の活性化に貢献しう る等の多面的な効果が期待できることがある.また，六次産業化·地産地消法が平成23年3月に施行され， 女性農業者を含めた六次産業化への取り組みが社会 的に認知され，補助制度の充実など種々の環境整備 が進んでいることがある.