農業の外部経済効果の内部化に向けて

摘要

農業、農村を取り巻く社会経済情　 勢の変化に対する政府の適切な政策的対応の必要性が叫ばれるようになって久しい。就業横会の拡大や農村部における生活環境の立ち後れから、青壮年層の非農業部門への流出は年々増大する傾向にあり、それに伴う農業労働力の高齢化や農業就業人口の絶対的な減少は、農業の産業としての基盤を損い、耕作放棄地の増大、農村の過疎化といった現象をもたらしている。 重要なことは、こうした農村部における耕作放棄地の増大過疎化といった状況が、市場で評価されない農業の公益的機能の損失につながり、将来的に国民全体の厚生の低下を引き起こすのではないかと危惧されることである。 近年では、こうした点に配慮した農業政策を進めていくことがわが国の農政の焦眉の課題とされてきており、農政学の分野では、経済学的には外部経済効果として発揮される農業の公益的機能を理論的に位置付け、それを定量的に評価する研究が活発に行われている。