ブラジルの食料需給と農産物貿易

摘要

本稿は農林水産政策研究所で2008年度から3年間 実施されたプロジュクト研究『世界食料需給の中長 期的な見通しに関する研究』のうち，ブラジルの食 料需給に関する研究成果を紹介するものである。FAO (国連食糧農業機関）によれば，ブラジル は2001年にオーストラリアを抜いて以降，世界一の 農産物純輸出国の座を維持しており，世界有数の食 料供給国である。ちなみに，2007年の場合，2位が 同じ南米のアルゼンチンで3位が米国である。ただし，同じ農産物純輸出国といってもブラジル やアルゼンチンと米国では農産物貿易において輸出 に特化している度合いが異なっている。第1図を見 ると，ブラジル、アルゼンチンは輸出特化係数が1 に近く，農産物貿易が極端に輸出に偏っているのに 対し，米国の輸出特化係数はゼロに近く，輸出と輸 入がほぼ均衡し，農業における産業内貿易の比率が 高いという特徴がある。日本はこの図の中でもブラ ジルと対称の位置にあり，世界一の農産物貿易赤字 国であると同時に輸出特化係数もほぼ-1に近い値 である。ブラジルと日本が反対にあるのは地球上の 地理的位置だけではなさそうだ。