植物病原細菌の病原性はどのようにして分化してきたのだろうか

摘要

ひとくちに植物病原細菌といっても病原性をはじめとする各種の性質に関していろいろなバリエーションがあり，それぞれ異なる属や種に整理されている。 さらに，一つの種の中でも激しく病原性分化が起こっているものもあり，これらは診断や同定に使われるような基本的な性質に関してはまったく同じでありながら，宿主範囲や病徴が異なっていることから，病原型（pathovar）という変種レベルの分類階級で類別されている。 pathovarは実験室内における検査では区別できないために，時間と手間のかかる接種試験を行わないとその正体が分からないことが多い。 　 また，育種によって作られた抵抗性品種ま　 しばらく栽培を続けるうちに病原細菌の側に新たな病原性分化が起こり，抵抗性が破られて羅病化してしまうこともある。 このように，植物病原細菌にみられる病原性分化という現象は，病気の診断や防除対策を行う上で大きな障害となって我々の前に立ちはだかっている。