ドラマ理論を用いた有機農業振興戦略のジレンマに関する分析

摘要

本論では，農山村地域における環境保全型農業として注目されている有機農業に焦点を当て，ドラマ理論を適用して，有機農業に関わる各種の主体間の対立，協調関係を明らかにする。 ドラマ理論はゲーム理論から発展した理論である。 ゲーム理論は合理的な意思，行動決定過程を分析する手法の一つとして知られているが，ドラマ理論はこのような「合理的選択」モデルでは無視されてきた，選択にまつわる感情的で政治的な面に注目した手法である。 またドラマ理論において，その分析的で実践的な「エンジン」として注目されている敵対分析法は，多くの主体が問題に関与し，かつそれぞれの利害が対立し，複雑に絡み合っているような状況に対して有効な分析用具である。そこで本論では，有機農業が抱える状況を多主体複雑系と捉え，ドラマ理論の分析手法である敵対分析法を適用してモデル化し，それぞれのコンフリクト（利害対立）を読み解き，意思決定主体がどのような相互作用を経て，整合性のある合意に達するのかを明らかにする。 更に本方法が起こりうる将来の状況を予測する上でも有効であることを示す。