非分娩馬への泌乳誘発および乳母としての利用

摘要

本研究では、サラブレッド種非分娩馬にホルモン処置を施して泌乳を誘発させ、乳母として子馬を哺育すること が可能カゝどうかにつtゝて検討した。また、泌乳誘発させた非分娩馬の各種血中ホルモン濃度の変動およびホル モン処置後の受胎の可能性につtゝて調査した。非分娩馬へのホルモン処置として、合成黄体ホルモンおよび安息香酸エストラジオールの14日間投与に加え、 PGF2"製剤を8日目に、さらに、ドパミンD2受容体拮抗薬を8日目から21日目まで14日間投与を実施し、14日 目に乳母として子馬に導入した。乳母を導入した子馬と対照群の子馬の体重差は、12週齢で29kgと最大になつ た力、離乳直後の24週齢では17kgに縮小し、35週齢以降は概ね同等に推移した。合成黄体ホルモンおよび安 息香酸エストラジオールの継続投与終了から10日後に最初の排卵を認め、これ以降、血中プロジェステロン(P4)、 エストラジオール(E2)、卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)は、Iゝずれも正常な発情周期へ と復した。さらに、同様のホルモン処置によって泌乳を誘発させた異なる非分娩馬におt 、て、ホルモン処置終了後 の初回排卵での受胎が可能であることが明らかとなった。本研究は、サラブレッド種非分娩馬にホルモン処置を施して泌乳を誘発させ、乳母として利用できることを示し た最初の報告であり、ホルモン処置による各種血中ホルモン濃度の変動およびホルモン処置後の受胎の可能性 についても初めて明らかにした。この方法は、サラブレッドの生産現場において経済面、防疫面、さらには動物倫 理面の観点から非常に有益であり、臨床現場での応用が期待される。