育成期サラブレッドにおける簡易乳酸濃度測定法の検討

摘要

育成期サラブレッドのフィールドトレーニングの科学的管理技術の一つとして、有酸素運動能力の評価と運動負荷の設定に、安全かつ正確な血中乳酸濃度測定を導入するため、ウマの血中乳酸濃度測定における簡易乳酸濃度測定装置L－proの有用性を明らかにすることを目的とし、1）各乳酸濃度測定装置の精度および相関性、2）L－proを使用したランセット穿刺および頸静脈採血による血中乳酸濃度の相関性、について研究を行った。 供試馬に、競走に向けてトレーニングが行われているサラブレッド種を用い、簡易乳酸濃度測定装置にはAccusportとLactate－Proを、標準機にはYSI1500を用いて検討を行った。 L－Proは低濃度および中濃度において、同時再現性および目差再現性共にACより良好であった。 L－Proは血中乳酸濃度が10mmol／l未満、ヘマトクリット億が57％以下においてACより十分な精度を示した。 また、L－proを用いてウマの頚部皮膚からランセット穿刺による末梢血により測定された血中乳酸濃度は、頚静脈血とほぼ同様の値を示した。 さらに、採血後に細菌感染症や炎症反応等は確認されず、検査者も安全に検査が行えた。これらの結果よりL－proを使用した頚部穿刺によるフィールドでの血中乳酸濃度測定は、従来の頸静脈採血を必要とせず、簡易で安全であり、日常の最大下運動のトレーニングにおいて、有酸素運動能力の評価、トレーニング負荷の設定に使用できるものと考えられた。