胎盤停滞の病因検索

摘要

分娩は第3期である後産期，すなわち胎盤の排出を終え て初めて完了する。したがって.胎盤停滞の個体は正常に 分娩を完了していないので異常分娩ということになる。ま た，例えば「分娩後5日経過しても胎盤が排出されない」 といった表現は誤りであり，「分娩後」は「胎子娩出後」と 訂正すベきである。胎盤停滞は牛の臨床家にとって日常的 に遭遇する疾患であるものの，実用的かつ有効な治療法や 予防法は確立されてこなかった。また，生命を脅かす疾患 でもないために"様子見"ということで放置され，自然治 癒を待つ場合も少なくない。しかしながら，乳量低下，子 宮内膜炎への移行や子宮修復遅延，そして繁殖成績に及ぼ す悪影響など(表—1)を考えると，その経済的損失は大き い。胎盤停滞牛における繁殖成績は正常に胎盤を排出した 牛と比較して14%低下したと報告されている（Grohn and Rajala-Schultz, 2000)。したがつて，早期治療ならびに予防 対策を確立しなければならない。そのためには病因を整理 して考える必要がある。本稿では，最近の知見も紹介しつ つ，胎盤停滞の病因について概説する。