ァカマツ天然集団における雌雄配偶子レベルでの遺伝子流動が 種子散布段階の遺伝的多様性にもたらす寄与

摘要

樹木集団において，その遺伝的動態（保有する遺伝 変異の次世代への推移）を把握することは，集団の遺 伝的多様性の維持メ力ニズムの理解に重要である。集団内の遺伝変異は，浮動(drift),選択(selection), 突然変異（mutation)や遺伝子流動による他集団か らの移入(immigration)といった諸要因によつて変 動する1),2)。遺伝的動態の中でも，遺伝子流動(gene flow)は，親個体が交配する際に花粉や種子を介して子へ遺伝子を受け継ぐプロセスであり，植物の更新過 程において遺伝子が移動する唯一の動的な機会である ことから，重要な働きをもっと考えられる。そして， 次世代の最も初期の生育段階に位置する散布種子段階 の遺伝変異は，、遺伝子流動の状況を最も直接的に反映 する産物であり，また次世代の遺伝変異の構成要素で あある。