ネオスポラ疾患の最新情報（予防，治療）について

摘要

牛のネオスポラ症は，ネオスポラ原虫の感染により引き起こされる疾病で，妊娠3．5－8ケ月ぐらいに発生する流産，あるいは新生子牛の神経症状などを主徴とする疾病である。ネオスポラ症は，1988年に米国で初めて報告されて以来，我が国を含めて世界各国で報告がなされている。ネオスポラ症に関する研究報告は，発生報告，臨床症状，原虫の生物学的性状，診断法などについては数多くの総説が英文や和文でもなされており，多くのまとまった知見がすでに得られている。 そこで今回の講座では，ネオスポラ疾患の最新情報として，近年行われたネオスポラ症に関する各種の疫学的研究成果を中心に取りまとめ，ネオスポラ症の発生の特性，ネオスポラ症の重要性，経済的損失，治療法，生活，環と感染様式，予防法などについての知見を給括する。 なお，今回の講座は臨床の獣医師を主な対象とするため，できる限り臨床現場に関係のある事例や研究を中心にまとめることにする。