同一健康豚の同一臓器から分離された大腸菌の多様性について

摘要

わが国の家畜衛生分野における抗菌剤のモニタリング 体制は、同一個体から分離された同一菌種であれば、薬 剤感受性は異ならないという考えのもとで行われてい る。しかしながらわれわれは、同一健康豚の同一検体か ら分離された多くの大腸皿が異なる薬剤感受性を示す ことを見出した。そこで本研究においては、同一個体の 同一臓器、および腸管内容物に生息する大腸菌の生態を調査するために、薬剤感受性、0群血清型別、遺伝学的 性状すなわち13種類の病原遺伝子の検出、系統発生学的 グル一プへの群別、およびパルスフィールドゲル電気泳 動解析を行い、同一個体の同一検体由来株間で比較し た。供試菌株は8頭38検体から分離された281菌株であ る。38検体中33検体由来株間において、薬剤感受性の異 なる菌株が認められた。また、同一個体の同一検体から 分離された菌株間において、薬剤感受性の異なる組み合 わせは536組あった。この536組中531組は0群血清型、 および遺伝学的性状の両方、もしくはどちらか一方が異 なっていた。一方、同一個体の同一検体から分離された 菌株中、同一の薬剤感受性を示すグループは58グル一プ であつた。この58グループ中52グループは0群血清型、 あるいは遺伝学的性状のいずれか、あるいは両方とも異 なる菌株が存在している。これらの結果は、同一健康豚 の同一臓器、および腸管内容物に生息する大腸菌がきわ めて多様であることを示している。