受精卵呼職測定装置の開発と応用: 胚のクオリティーの的確な評価が体外受精成功のカギ

摘要

体外受精、胚移植（in vitro fertilization－embryo tranSfer：IVF－ET）は，医療分野では不妊の有効な治療法の一つであり，家畜繁殖領域では家畜の増産や品種改良，クローン胚やトランジェニック家畜作出の基盤技術となっている．一般に，IVF－ETにおいては，卵巣から多数の卵子を採取し，体外受精により発生した複数の胚の中から移植する胚を選択する方法が一般的である．移植前に最も質的に良好な胚を選別することは，妊娠率向上や流産率低下のために有効であると考えられることから，精度の高い胚クオリティー評価法の重要性が増している．現在，医療および家畜繁殖領域ともに，胚のクオリティー評価は割球の形態を指標にした方法によって広く行なわれているが，これは簡便である一方で，判定基準が曖昧で観察者の主観に頼るため判定精度に問題があると指摘されている．本稿では，筆者が考案した電気化学的呼吸計測技術を応用した独自の発想に基づく胚クオリティー評価法を紹介するとともに，生物および工学の共同研究により開発した「受精卵呼吸測定装置」とその応用例について紹介しよう．