近年のかんきつ開発品種:「みはやJ品種特性と 栽培上の注意点について

摘要

最近は気候変動の大きさから冬季に比較的温 暖な西南暖地においても年明け以降に厳しい寒 波が襲来し、す上がりや苦味の発生といった果実 障害が発生し、経営にダメージを与えることも 少なくありません。こういつたことなどから多 くのかんきつ産地で年内に成熟し、温州みかん とは明らかに異なる特徴を持つ商品性の高い良 食味の早生かんきつ新品種育成への要望は依然 として高いのが現状です。農研機構では年内に 安定して減酸し、温州みかんとは区別性の高い 早生かんきつ「みはや」を育成しました(写真1)。「みはや」は果実重が190 g程度で、果皮は赤橙 色で滑らかであり、概観が美麗です。11月下旬 には成熟し、糖度12%程度、酸含量は11月には 1.0%以下となり、糖酸比が高く食味は良好です。 種子数は少なく、無核果も多く生産できます。し かし、糖度は地域によるばらつきが大きく、糖度 14%を超える土地もあれば、10%以下という地 域もありました。また、収穫適期を過ぎて遅くま で樹上に着果させていると陽光面の褪色ゃ果梗 部周辺にクラツキングが発生する場合があるの で適期収穫に努める必要があります。また、「み はや」は果実が赤橙色で赤みが強ぐ、褪色ゃク ラヅキングが発生すると目立ちやすいため、でき る限り発生させないことが望まれます。新品種である「みはや」を円滑に普及させて年内産かん きつ産業の状況を活性化し、消費の促進と生産 者の収益改善のためには、高品質果実生産技術 の開発が必要です。そこで、農林水産省「農林水 産業、食品産業科学技術研究推進事業」において 上述した課題に対して取り組んだ研究結果から 対策技術をマニュアル化しました。本稿では透 湿性シー卜によるマルチ栽培を利用した高品質 果実安定生産技術について紹介します。なお、こ のプロジェク卜では高品質果実生産の目標として糖度13%以上、果実重180 g程度、紅が濃く、 外観がきれいな果実を生産することを目標とし て取り組みました。