原油、穀物の輸入価格上昇による価格波及分析

摘要

ここ数年で，原油，穀物をはじめとした多くの一次産品の価格が世界的に急上昇した．原油価格高騰の主な原因として，“新興国の石油需要の増大，OPECの供給余力の縮小，中東をはじめとした地政学的リスクの高まり”など，増大する石油需要に対して十分供給が拡大するのかといった需給逼迫要因，リスク増大要因に加えて，世界的な過剰流動性の下での，大量の投機、投資資金の石油先物市場への流入があげられる（伊藤〔2〕）．また，穀物価格高騰の原因として，新興国の経済発展に伴った，食料需要の増大や変化，及び，石油価格高騰により利益を得たオイルマネー，あるいは，アメリカの住宅投資に仕向けられていた資金の商品先物市場への流入，サトウキビや雉穀等を利用するバイオ燃料生産がある（松田、高橋〔3〕）．この結果，2003年8月から2008年8月までの5カ年問で，原油、天然ガス，輸入小麦，輸入大豆，雑穀（註1）の価格はそれぞれ320％，169％，93％，140％上昇した（日本銀行〔5〕）．しかし，9月15日の証券大手のリーマン、ブラザーズの経営破綻を機に，世界的な金融危機、信用収縮が世界同時不況をもたらし，穀物需要も減少するとの見　方が広まったため，投機マネーが商品市場から一　斉に流出（柴田〔6〕），これらの価格は下落に転　じた．