遠州灘から採取されたエゾボラ類の1種Neptunea sp．

摘要

刺し網やトロール漁などで混獲物として揚がってくる員類は，員類の愛好家にとって“美味しい”獲物である。筆者の一人，三好が通う愛知県内の漁港では，ニクイロヒタチオビ，シワヒタチオビ，ニシキヒタチオビ，ノグチヒタチオビ，スルガバイ，イグチガイ，ギンエビス，ナンカイボラ，カブトアヤボラなどがコンスタントに揚がる。そのような中，2007年の秋頃，遠州灘の水深300－400mから得られた漁業混獲物の中から，見慣れぬ形態のエゾボラ類の一種Neptunea sp．の死殻1個体が発見された。一見，ヒメェゾボラモドキに似るが，螺塔が高く，色彩が紫褐色である点でヒメェゾボラモドキと区別できるようであったが，1個体のみで軟体部もないためにそれ以上の比較ができなかった。その後，現在までに死殻1個体と生員2個体を追加入手できた。これらの標本に基づき周辺既知種との比較を行ったので，その結果を報告する。