ビタミンB_2およびB_6依存型酵素の立体構造と機能の精密解析

摘要

ビタミンB_2およびB6_依存型酵素は，生体内の代謝に重要な役割を担っており，多種多用なものが存在する．個々の酵素が，どのような分子を基質と認識し，どのような反応を触媒するのかは，活性部位の立体構造によって厳密に制御されている．しかしながら，現在のところ酵素そのものを直接目で見ることは不可能であり，アミノ酸配列やスペクトルから予測される立体構造はその全体構造のモチーフのみを示すもので，酵素の機能にかかわるアミノ酸倒錯間の相互作用を知ることはできない単結晶X線構造解析は，対象とする酵素の分子量によらず，立体構造を原子レベルで知る事ができ，活性部位に存在するアミノ酸残基と補酵素の相互作用様式を直接決定できる強力なツールである．生体内で微量にしか存在しない酵素をmgのオーダーで精製し，それを用いてX線回折実験に適した結晶を作成することは現在でも簡単ではないが，この数年の間に遺伝子操作技術の確立や放射光を用いた測定技術の進歩により，それまで考えられなかったようなスピードで解析が進むようになってきた．