単純へルぺスウィルス（HSV)

摘要

単純へルぺスゥィルス(HSV: herpes simplex vims)は，ヘルぺスウィルスのプロトタイプであり， ヒトに様々な疾患を引き起こす.本総説では，最新の知見を含め，HSV感染の分子機構に関して概説 する. ヘルぺスゥィルス科に属するゥィルスは，そのゲノム構 造や性状からalpha，beta,タ，およびgammaヘルぺスウィルス亜科に分類 される.単純へルぺスゥィルス（HSV: herpes simplex virus)には，2つの血清型（HSV-1とHSV-2)があり，い ずれもalphaヘルぺスウィルス亜科に属する34'39たHSVは， ヒトに脳炎，口唇ヘルぺス，性器ヘルぺス，皮膚疾患，眼疾患，全身性の新生児へルぺスウィルスといつた多様な疾 患を引き起こす.脳炎においては，無治療の場合，致死 率は70-90%に達する.抗ヘルぺスゥィルス剤を使用 しても10-20%が死に至り，2/3に中および重度の後遺 症が残る.比較的統計がはっきりしているァメリ力合衆国 では，HSV脳炎は年間約1500人，性器ヘルぺスは年間約 50-70万人，角膜ヘルぺスは年間約30万人，新生児ヘル ぺスには年間約ほ00人が羅患する.さらに，性器へ ルぺスはエイズウイルスの感染危険度を2-4倍程度増加 させるという報告もある.このように，HSVは医学上 極めて重要なウィルスである.