高病原性鳥インフルエンザ：途上国における発生の現状と対策

摘要

高病原性鳥インフルエンザ（Hnu）ウイルスはほとんどの野鳥と家禽に感染する．一般に水鳥類は抵抗性をもつといわれるが，最近，水鳥にも病原性の高いものが認められる．本ウイルスが感染すると，鶏では肉冠の腫脹，出血，元気消失，急死，鶏群の大量死などの症状が，また，解剖所見として消化器や呼吸器粘膜の出血，充血，潰瘍などが見られる（図1）．本ウイルスは感染鳥の呼吸器飛沫や排泄物に大量に含まれ，飼料，飲水，飼育用具，飼育人の衣服等を汚染して容易に拡散する．2004年以来，アジアの国々で大流行しているHP朗は感染症に国境がないことを実感させ，養鶏産業への経済的影響のみならずヒトの新型インフルエンザ大流行という脅威を喚起し，脆弱な現代社会に警鐘を鳴らしている．