ヘルペスウイルス感染症の克服

摘要

“ある病気が克服された”とは，病因が明らかにされ，治療法が開発され，かつ予防ができるという状態をさすのだろう．現在，数あるウイルス感染症の中で克服されたといいうるのは，恐らく，ワクチンによって根絶にまで至った天然痘だけであろう．しかし，この克服も思わぬ方向からの挑戟にさらされてはいる．では，ヘルペスウイルス感染症はどの程度まで克服されたのだろうか？ この四半世紀を振り返ってみると，いずれの点でも確かに大きな進展があったといえる．抗ヘルペス剤アシクロビアの開発とその臨床応用，新たなヒトヘルペスウイルス（HHV-6，HHV-7，HHV-8）の発見，水痘ワクチンの右効性の確立などが直ちに想起される．胃癌とEBV，カポジ肉腫とHHV-8などヒトの悪性腫瘍とγ-ヘルペスウイルスとの関係，また易感染性宿主におけるβ－ヘルペスウイルス感染症の病態についての理解も大いに進み，予防や治療に有用な情報が提供されつつある．25年前と比べると，ヒトヘルペスウイルス8種の間で差はあるものの総体的には，克服されつつあるとの印象をもつ．