盆栽(はちうえ)の図像学「盆栽尽し2図」

摘要

これまでとは一風変わった作品を今月は紹介したい。「おもちゃ絵」と呼ばれる浮世絵版画の一種類である。とくにここに挙げたように、鉢植えなどのモノを羅列してあらわした図、いわゆる「もの尽くし」の構図をなす作を紹介する。もの尽くしの版画には、動物尽くしや器物尽くしなどさまざまなテーマがあり、それらのなかでも鉢植え.盆栽尽くしは人気の主題であつたようだ。多くの作、多くのヴアリエーシヨンが残されている。今回取り上げるのは、そうした盆栽尽くしの図のなかでも、あらわし方が特徵的な二点の作である。二点の盆栽尽くしの図を見てわかるように、もの尽くしの図では、それぞれの盆栽を横から見たすがたで描くことがほとんどである。その植物らしさや鉢植えの全体像をよく見て取れる、いわゆる図鑑的な描き方と言える。植物の種類は、松や朝顔など重複するものが 一、二点あるのみで、そのほかはすべて別種の盆栽が描かれており、鉢の種類もすベて異なっているという、鉢尽くしの絵でもある。