貴農論を唱えた農政学者新渡戸稲造(第4回): 国際的視野で日本の近代農業を支えた知識人

摘要

江戸末期、青森の三本木原開拓や土木事業、都市整備を手掛けた由緒ある東北-南部藩の武家に生まれた新渡戸稲造。幼少から武士の精神、作法を身に着け、わずか九歳で上京して一流校で英語や農学、経済を学んだ。さらに、アメリカ、ドィッの大学へ留学して最先端の知識を吸収し、まさに文明開化を地で行く先人のひとりであった。その心底には、『日本の文化を外国に伝え、外国の文化を日本に伝える太平洋の架け橋になりたい』との想いがあつたという。在米中に稲造は、人生の転機とも言える出会いを遂げている。もともとキリスト教is者であつた稲造は、ジョンズ.ホプキンス大学創立者ホプキンスの信仰する、神と自分との対話中心であるクェ—力ー派に入会。そこで、敬虔なクェー力ー信徒のメアリ—.バターソン-エルキントン女史と出逢い、帰国直前の一八九一(明治二十四)年に結婚。また、稲造はクェー力ー派の人々に向けて講演したり、雑誌や新聞へ原稿を執筆したりと、活動を広げていった。