東京大学大学院農学生命科学研究科植物病理学研究室

摘要

明治39年（1906）4月，東京帝国大学農科大学に世界で最初の植物病理学講座が設けられ，白井光太郎が助教授として初代の講座担当となり，翌年初代教授となった。 白井光太郎は本邦に発生する植物病害を多数蒐集し，病原菌を同定，記載し，植物病理学の教科書を著して本邦における植物病理学の基礎を築いた。 実はこれに先立つ明治11年（1878）に駒場農学校には法律に基づき「植馨掛」が設置されており，すでに植物病理学や植物医科学の源流があったものと推察される。 事実，明治13年（1880）に設立した植物病理学科は「植嘗科」とも呼ばれ，「教員室などの戸口には「植嘗科」の掛札があって，同窓者も別段これをとがめることもなく管すましていた」とある（植物病学費達史，日野厳著，1949）（図－1）。