フィリピンにおける放牧ヤギの生産性改善に対する補助飼料給与の効果

摘要

フィリピンでは牧草中ミネラル濃度の季節変動（Fujiharaら1992）により放牧ヤギのミネラル栄養が不十分で、繁殖および生産成績低下の一因になっている。 特に成長および繁殖に関係の深いセレン（Se）の欠乏が示唆され、Serraら（1996）によって、Seを含む人工の添加剤である易溶性ミネラルグラスボラス（SGB）を妊娠中の雌ヤギに経口投与し、母ヤギと生まれた子ヤギの血液中Se濃度を改善する試験が行われた。 SGBの効果が半年間持続することから、SGB投与によって効率良くヤギの微量ミネラル栄養を改善することができると考えられた。 またHayashidaら（2004a）によると、育成期のヤギに濃厚飼料を5カ月問添加給与した結果、体重が有意に増加し経済的効果も期待された。さらに、地域の豊富な飼料資源であるマメ科飼料木茎葉のミネラル含量が比較的高いことに注目し、代表的な飼料木であるLeucaena leucocephala の茎葉を育成期のヤギに4カ月間添加給与した結果、L.leucocephalaの茎葉がタンパク質に加えてSe補給の際にも有用であることが明らかになった（Hayashidaら2004b）。 しかし従来農家で試験を実施することは難しく、現状では慣行飼養下におけるヤギの繁殖および生産成績に関するデータがほとんどない。 そこで本研究では農家におけるヤギの生産性の改善に対する補助飼料給与の効果を査定した。