マウスのクローン

摘要

1997年，生物学上最大級のブレークスルーが報じられた．成体の体細胞から作られたクローン羊ドリーの誕生である．しかし400回以上もの桟移植でたったの1頭しか生まれなかったこと，ヒツジという大きな勤物で実験費用が膨大なものとなってしまうことなどから，その後すぐには誰も再現することができなかった．一方，マウスやラットなどの実験動物は，小型で抜いやすく，安く購入でき，実験しやすいという利点があるにもかかわらず，クローンの実験はほとんど進んでいなかった．われわれは1998年，それまで不可能だと思われていた方法を用いてマウスのクローン作出に成功した．これまでに100匹以上のクローンマウスが生まれており．それらのクローンマウスを使って老化の研究や「すり込み遺伝子」の研究など，ヒツジやウシを使っていては時間がかかりすぎて不可能な研究を，国際的な共同研究を組んで進めているところである．マウスでのクローンの成功は，今後の基礎生物学の研究に非常に大きな貢献を果たすことになるだろう．