放牧衛生検査等で利用できる 簡易貧血測定装置の開発

摘要

放牧において、牛は種々の感染症の他、蹄 病、中毒、外傷など多くの疾病や事故の危険 にさらされている。なかでも牧野に生息するマ ダニによって媒介される小型ピロプラズマ病は、 貧血、発育不良などの障害を引き起こすこと から長年にわたり重要疾病と位置づけられて おり、早期発見を目的とした定期的な衛生検査 (臨床検査や血液検査）が実施されている。放牧場は山間地に位置することが多いため、 衛生検査では器具や機材、電源の確保などに 制約を受けやすい。したがって、通常、図1 に示すように集畜後、追い込み栅等の保定施 設内で臨床検査や採血を行い、血液サンプル は遠心分離器など分析機器や電源施設のあ る牧場事務所や家畜保健衛生所に運んで検 査が行われている。この場合、検査中は牛を その場に待機させておくか、保定施設から解 放した場合は検査結果に異常があった牛を再 び集めることになる。放牧場の条件によっては採血後検査結果が出るまでに1-2時間、あ るいはそれ以上かかることもまれではない。こ のため牛や放牧場管理者に大きな負担をかけ、 また検査に続く速やかな治療や処置に結びつ かない場合がある。