環境保護と地域活性化のための獣害対策—狩獵と環境を考える円卓会議「提言書」から一

摘要

江戸時代から明治にかけて、大型野生動物 の乱獲が生じ、地域的絶滅によって多くの野 生動物の分布域が縮小し、生息数も激減した。 江戸時代には新田開発に伴い獣害力，加した ために積極的な駆除が実施されたこと、明治 時代にはスポーツハンティングが盛んになる 一方、軍事物資としての毛皮獣市場が形成さ れたため、商業的な捕獲によって過剰乱獲と なったためである。軍用毛皮の需要の高まり に応じ、国策として狩獵者の組織化が行われ、 大日本獵友会が設立された。商業的な捕獲により激減した野生動物を回復させるため、80 年にもおよぶ長期的な保護政策がとられた。 長期にわたる保護政策、野生動物にとっての生息環境の好転などによって、最近の20年 間には野生動物の分布域の拡大や生息数の増 加が生じている。環境省が実施した中、大型 獣の全国規模での分布調査によると2003年に は1978年に比較して、シカでは1.7倍（全区 画数の42%に生息）、力モシ力では1.7倍 (29%)、イノシシでは1.3倍（39%)、 二ホン ザルでは1.5倍（20%)に拡大している（図1)。