鶏のロイコテトゾーン症と小倉喜佐次郎獣医学博士との関係，そして知り得た日本統治下の台湾の獣医畜産事情（10）

摘要

台湾の畜産は，その農業経営上，また島民の生活上重要な役割を分担している。例えば牛は農耕上最も大切な役畜であって，最近の統計によれば水牛の29万余頭を筆頭に，黄牛7万8千余頭，その他，少数の印度牛及び乳牛等を併せて総数が38万余頭と称されている。　豚は島民必須の副食物である。従って養豚事業の盛んなることは，その数に於いても明らかである。最近（昭和6年度）の統計によれば，173万余頭が飼育されている。台湾の面積23，032方里，あたかも内地の九州と略同じであって，内地に於ける同年の豚統計94万余頭に比べれば殆んど倍，飼育されていることになる。人口は僅かに内地の20分の1以下の本島に於いて，1ケ年，優に百万頭の豚肉の消費があるのに比し，内地では僅かに69万余頭を消費しているに過ぎない。その豚肉の消費量の莫大なことには驚嘆せざるを得ない。従って養豚業は全島に普及している。この反面，豚の伝染病の発生も多く，即ち，豚コレラは終年，絶えることがない。