いま蘇る原智恵子'伝説のピアニスト'

摘要

原智恵子の名前を知っている人はかなり古くからの音楽愛好家のはずである。最近知合いのSさんから「原智恵子のレコードを持っていないか」と突然聞かれ，私の記憶から消えかけていたこのピアニストの名前を思い出した。 原智恵子が活躍していた頃のわが国の西洋音楽黎明期は，レコード業界もマニアも欧米の演奏家の演奏こそが本物と思い,邦人演奏家など関心をもたない時代だった。 演奏会も同様で原智恵子や安川（草間）加寿子の名前は知ってはいても外来演奏家に較べれば人気なく，多分レコードそのものも少なかった筈である。