デジタルマイクロ天秤による鉛蓄電池充放電反応のその場測定

摘要

本研究では，鉛蓄電池正極活物質PbO_2の充放電に伴う質量変化をその場測定するた健，検出感度10~（-5）gのデジタルマイクロ天秤を用いた計預せシステムを構築した。 得られた結果は，以下のように要約できる。 （1）質量変化のその場測定データをCu電析試験により検証したところ，浮力補正を施した測定データは電解液中での電極反応に伴う質量変化とほぼ正確に一致することが分かった。 （2）Pbの電解酸化では，高電流密度で酸化したPb電極ほどPbSO_4の生成が少なくなり，PbO_2が生成し易いことが分かった。 また，同一電気量では，高濃度H_2SO_4中で電解酸化した方がPbO_2の生成量が多いことを確認した。 そのため，濃度5.0kmolm~(-3)のH_2SO_4中で生成したPbO_2／Pb電極の正極電池活物質としての容量は，濃度0.1kmolm~(-3)のH_2SO_4中で調製したPbO_2／Pb電極の2倍程度になった。 （3）PbO_2の放電／充電サイクル試験では，電極電位と質量変化をその場測定できた。 放電過程では，主としてPbO_2→PbSO_4が進行し質量の増大が観測された。 充電過程では，その逆の反応が生起し質量は減少するが，3サイクル目の充電では放電生成物が完全には元の状態に戻らず，不可逆な放電生成物が残存することが示唆された。また，PbO_2<=>PbSO_4の主反応に加えて，放電反応の後期にはP_bSO_4→Pbの反応が，充電反応の初期にはPb→PbSO_4の反応が重畳されることなど，新たな事実を確認した。