問題解決における現象の観察の仕方を学ぶ-第1回現象の観察が果たす役割，観察を行う場合の基本

摘要

胃の検査を行う場面を想像してみましょう。以前の検査は造影剤であるバリウムを飲んでからレントゲン撮影を行い，病変部の有無を確認する方法が主流でした。この方法は造影剤を用いることで病変部とそうでない部分に白黒のコントラストを作り，色の違いから病変部を発見します。現在ではこの検査方法に加え，内視鏡を用いて胃の内部をモニターに映し出し，病変部の有無を確認することが可能となりました。さらには，必要に応じて検査時に胃の組織を採り，生体検査を行うこともできます。前者の例で紹介した造影剤を用いる方法が"間接的”な観察であるのに対し，後者の内視鏡による方法は“直接的"な観察ということができるでしょう。間接的な方法はコントラストの作られ方や画像診断を行う人の技量によって病変部が見落とされてしまう可能性があります。しかし，直接的な方法は100%見落としがないとはいえないものの，かなりの精度で病変部を見つけることができそうです。「観ればわかる」といえるように，物事が変化している瞬間や場所を直接的に観ることができれば，問題解決の近道となることは読者のみなさんにもおわかりいただけると思います。