マクロでは正しくても個別には違う見方もできる

摘要

相変わらず対前年同月比でマイナスが続いている紙•板紙需要だが、そうした全体像と個別の実感の間には少なからずギャップがあるものらしい。当方は先日来、各社の決算説明会に出席して話を聞いているが、そこで強く感じたのはこのギャップについてだ。例えば印刷•情報用紙を主力とする某メーカーは、森林認証紙を中心に主力工場がフル操業を続けているが、市場からの注文に追いつけない状態だという。このメーカーがOEM供給を受けている別のメーカーも、薄物を主体に品不足が続いているようだ。この間、各社は「需要に見合った生産体制」を構築するため抄紙機の停機•削減や要員の見直しを行ってきたが、そうした行き方はマクロでは正しくても個別のビジネスごとにみると、いろいろな問題や矛盾をはらんでいるのではないか。別の話をすると、中国の製紙産業は印刷用紙や白板紙を中心に深刻な需給ギャップを抱えているとされる。本誌でも、そうした記事を掲載してきた。もちろん、この見方は全体として正しいわけだが、一方で中国に進出している日本のメーカーは「現地の需要が旺盛で、作れば作っただけ売れる。このまま行けば早い時機にマシン増設を視野に入れなければならなくなる」と語っている。その製品に売価を上回る価値(品質、ブランド)があるとユーザーが感じれば、マクロの需給関係とは関わりなく売れていくということなのだろう。そこには、ビッグデータやIoTを活用したモノづくりのヒントがあるように思う。