中国農村の土地制度改革：土地流動化に向けた取組と課題

摘要

中国農村の土地制度は,計画経済時代は人民公社制度であったが，改革開放政策実施後は個々の農家が一定の土地の農業経営を請け負う農家請負経営が普及した。農家請負経営によって.農業生産高は大きく増加し，農村での商工業も飛躍的に発展したため，中国政府はこれまで.農家請負経営の法的整備を充実させる等.農家請負経営の安定化を農村政策の最優先課題としてきた。しかしながら，近年は.農村人口の都市流出が進み，一方で中国農業の生産性向上が求められるようになったことから.農村の土地流動化を進め，効率的で生産性の高い新型農業経営主体の育成が緊要の課題とされるようになった。こうした要請に応え，農村の土地流動化のための切り札的な措置として考えられたのが三権分置である。三権分置とは，康村土地に関する権利が所有権と請負経営権の二つであったものを.請負経営権をさらに請負権と経営権に分け，経営権だけを流動化させるというものである。2018年末の農村土地請負法の修正によって，このための土地制度改革が行われたが,農家請負経営に内在する制約も大きく，今後の課題は多い。