四国地方における高速道路整備に伴う利用者便益計測に関する考察

摘要

四国の高速道路ネットワークは，未だ計画総延長の約3割が未整備であり，暫定二車線区間も多いため早期の整備が望まれるが，現行の事業評価では十分な便益が計量されない状況にある。しかし，現行の事業評価では，自動車交通需要のみを扱った需要固定型の交通量配分に基づいているため，交通手段の転換や目的地の変化，新たに生ずる誘発需要などが評価できず，また，三便益のみを対象としているため，整備に伴う信頼性の向上等の効果が考慮されていないなど，さまざまな課題がある。加えて，今後の道路整備事業評価においては，社会に甚大なインパクトをもたらすであろう自動運転化の影響の考慮が不可欠となる。本稿では，それらを踏まえ，完全自動運転社会を想定した上で.四国の高速道路整備を対象に利用者便益を試算した結果を紹介し，それを通じて，現行の事業評価の問題点や今後の便益評価において考慮•検討すべき事項について考察する。