π-d系分子性導体

摘要

分子性導体の多くはドナー性またはアクセプター性の有機分子とそのカウンターイオンから構成される電荷移動錯体であり，電子物性は主に有機分子に存在するπ電子が担っている。π-d系分子性導体は有機分子またはカウンターイオン骨格の中に開殻d電子をもつ遷移金属イオンを導入した物質群である。これらの物質では伝導電子と局在スピンの共存状態やπ電子とd電子の混成状態などπ電子のみの系では得られない電子状態が実現する。代表的なπ-d系物質は有機ドナー分子であるBETS（bis（ethylenedithio）-tetraselenafulvalene）と高スピン状態の3d電子を持つFeX_4~-から構成されるκ-，λ-BETS_2FeX_4塩であり，低温において磁気秩序と超伝導の共存した状態や磁場誘起超伝導状態が実現する。